第15回講演会報告

【事業概要】
開会の辞 大槻公一氏(京都産業大学 教授)
報告 NPO法人QOLサポート研究会の活動 松本高明氏(理事長)
司会 濱元誠栄氏(銀座みやこクリニック 院長)

第1部:講演会

講演1:岩田敏氏「がんと感染症対策について考える」

第1部の講演会は前回の講演会の内容を進展させる目的で前回と同じテーマを選んだ。
がんと感染症を多角的に捉え内容の濃い講演であった。はじめに感染症の現状、それを取り巻く背景の変化の説明からはじまりがんの治療と感染症のリスクとそれに対する感染症の対策について詳しく説明された。
ワクチンで防ぐことのできる疾患はワクチンで防ぐのが感染症対策制御の原則と強調された。
更に疫学の詳しいデータ、学術文献、新聞報道などを定まった時間内でわかりやすく詳しく解説され最後にがん診療における感染症対策として重要なのは、必要な時期の予防投薬、適切なワクチン接種、手指衛生の項目をまとめとして提言された。
参加者からは「もっと話が聞きたかった」等の意見がアンケートに寄せられた。

講演2:井上哲夫氏「抗がん剤を使用される患者様の頭皮ケア」

抗がん剤投与中の対策と抗がん剤使用後の対策の2つのテーマについて解説された。
抗がん剤投与中の対策でははじめに抗がん剤による脱毛の傾向から話され、ヘアサイクルと脱毛、皮脂の解説、マイクロスコープによる皮脂、毛根の観察等基礎的な説明をされた後、投与中の対策としてシャンプの必要性とシャンプの方法について、詳しく丁寧に説明された。
抗がん剤投与後の対策としてはマッサージの目的、方法、体調については低体温、冷え症対策、生活のリズム、必要とされる食事の内容、さらにヘアカラー、パーマ等の開始時期についても提言された。
講演内容はわかりやすく、アンケートには患者のみならず一般の生活に参考になる講演等の好評がよせられた。

講演3:南友里氏「歌って腹式呼吸で健康に」

始めに身体の構造も科学であり、科学的に腹式呼吸のメリットを知って健康体へと導くことを目的として話された。
呼吸法には胸式呼吸と腹式呼吸があり、それぞれの呼吸法の違いを説明し、歌における腹式呼吸のメリットについて述べられた。歌唱のみならず、腹式呼吸は自律神経が整う、代謝がよくなるお腹が引きしまる、腰痛の改善等のメリットも解説された。
腹式呼吸の仕方について、姿勢、息の出し入れなど実地に指導を受けたのち腹式呼吸をいかして参加者全員で、歌「1滴の酸素」を歌い腹式呼吸の大切さを認識した。

第2部:交流会

鍵盤ハーモニカ隊の演奏で開始した。

第1部の講演会では時間の都合上質疑応答の時間がとれなかったが、講師の方々と個人的に日頃抱える問題を話し合える貴重な機会でもあった。
さらに第1部の演者南友里氏が「1滴の酸素」他を独唱し、参加者の合唱も加え、和やかな雰囲気の交流会であった。
今回の講演会では講演の司会に決定していた市村宏氏(金沢大学大学院教授)が急用のため出席できなくなり、はじめて会に参加された濱元誠栄氏(がんの遺伝子治療が専門)が講演の司会と第2部の挨拶を引き受け会をスムースに進行させた。

「がんを考える」をテーマに3回の講演会を異なる視点に立って開催したが、今回の講演会は参加者からは感染症について意識、予防の大切さ、頭皮ケアまた腹式呼吸の大切さ等々多くのことを学ぶ貴重な機会が与えられた等の感想が多くアンケートにも寄せられた。

今回の講演会もNPO法人QOLサポート研究会の初期の目的である「市民のQOL向上」を更に進展させる成果を得たと確信し、講演会を継続させることは困難なことも多いがこの成果を次回の講演会にも活かしていきたいと切望している。