糖尿病の血糖値およびHbA1cの変動と高濃度酸素液(WOX)飲用

萩原 敏且 1),3) 松本美弥子 1),3) 織田 慶子 2),3) 松本 高明 1),3)

1) メディサイエンス・エスポア株式会社、2) 保健医療経営大学保健医療経営学科、3) 活動法人QOLサポート研究会

はじめに

世界保健機関(WHO)は2016年4月7日の「世界保健デー」に、世界の成人糖尿病患者数は2014年までに4億2,200万人に達し、11人に1人が糖尿病を発症しているという調査結果を発表し、有効な対策をしなければ2025年には世界の糖尿病人口は7億人以上に増えると予測している 1) 。わが国でも2016年には成人の糖尿病有病者は1,000万人を超えた 2)。2007年以降、わが国では糖尿病の可能性が否定できない予備群は減少しているものの、糖尿病が強く疑われる患者は漸次増加傾向にある 2) 。糖尿病の検査診断には血糖値と糖化型へモグロビン(HbA1c)の測定があり、後者は糖尿病合併症予防の基準として重要な役割を果たしている 3) 。われわれが開発した逆浸透(RO)水に純酸素を混合させた飲用高濃度溶存酸素液は、動脈血酸素飽和度(SpO2)を上昇させ 4) 、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、うつ病の改善に有効であると思われることを報告したが 5), 6) 、その効果が糖尿病患者の血糖値やHbA1cの改善にも有効であることが認識されつつある 7) 。そこで前報 7) で報告した17例に、本報では新たに7例を追加し、合計24例について糖尿病に対する高濃度酸素液(WOX)飲用効果を、性差による効果も含めて検討した。

対象および方法

医療機関を受診し、臨床検査結果について個人情報保護法に基づき、個人が特定されない方法で公開することの了解が得られた成人を対象に、医療機関による臨床検査結果に基づき、血糖値およびHbA1cから糖尿病、あるいは糖尿病が疑われる患者を含め、成人24例(男性16例(年齢40~70歳代)、女性8例(年齢50~60歳代))を対象に検討した。このうち男性12例、女性5例は前報で報告している。

被験者は、表1に示す方法で1日1/2~1本を目安にWOXを飲用した。飲用試験実施にあたり、性別、年齢、体重、基礎疾患の有無など一般的な質問ならびに糖尿病歴、および治療法についての回答とともに、血糖値およびHbA1cの検査をWOX飲用前(期間は限定せず)および飲用後に行った。飲用後の検査は飲用終了後およそ1ヵ月以内を目処に実施した。被験者についてSpO2の測定はしていない。なお、HbA1cは第56回日本糖尿病学会で定められた「糖尿病合併症抑制のために推奨される治療目標7.0%未満」を基準値とし、これに対応する空腹時血糖値130mg/dL未満(食後2時間血糖値は180mg/dL未満)8) を血糖値の基準値とした。血糖値およびHbA1cの飲用後の数値の低下はt検定で解析した。

表1 WOXの飲用方法(飲用量)について

飲用試験用に500mLペットボトル24本提供
起床時(朝食前) 125~250mL
就寝時 125~250mL
呼吸困難を感じられるときは125~250mL
その他、体調により125~250mLを適宜増加させます
症状の進行などによりWOXが不足した場合はご連絡下さい

結果

被験者の多くは開始後1ヵ月以内でWOXの飲用を終了した。被験者の背景および検査結果は表2に示す。医療機関については無記載が男性1例、女性1例にみられたが、その他の患者についても多くは医療機関名の記載はなかった。糖尿病合併症抑制のための基準値は空腹時血糖値で130mg/dL、HbA1cで7.0%未満としたが、飲用前に血糖値、HbA1cともに基準値を超えたのは24例中13例(54.2%)(男性9例、女性4例)であった。また、いずれか一方のみ基準値を超えたのは血糖値で3例(男性:No.1、4、15)、HbAlcで3例(男性No.9、女性No.2、6)であった。飲用後血糖値では5例(男性:No.1、4、6、13、女性No.1)、飲用後HbAlcでは3例(男性No.3、9、13)が基準以下に低下した。平均すると男性16例の血糖値はWOX飲用前で平均166mg/dLであったが、飲用後には134mg/dLとなり低下傾向がみられた(p < 0.01)。また、HbA1cでも7.6%から7.0%へと低下傾向がみられた(p < 0.05)。これに対して女性8例ではWOX飲用後の血糖値の低下は5mg/dLとわずかであり、HbA1cも8.0%から7.9%とわずかな低下であった。なお、WOX飲用後検査まで期間が1ヵ月を超えた例が6例(男性:No.3、6、13、14、女性:No.6、8)あったが、女性のNo.6を除き、血糖値、HbA1cとも低下傾向は維持されていた。

性別による血糖値およびHbA1cのWOX飲用前後の変動を図1、2に示す。血糖値およびHbA1cとも高値を示した例では数値の低下が明らかであった。なお、男性で飲用後の血糖値が急上昇している例(No.10)があるが、HbA1cは低下していることから、WOX飲用後検査のために採取された血液材料が空腹時のものではなかった可能性が疑われた。また、飲用者の多くは薬物療法を行っており、そのうち6例はインスリン治療の記載があるが(表2)血糖値およびHbA1cが高値の例(女性No.3)もみられた。

表2 被験者24例の性別, 臨床検査結果と血糖値および HbA1c

図1 被験者男性16例におけるWOX飲用前と飲用後の血糖値およびHbA1cの変動

図2 被験者女性8例におけるWOX飲用前と飲用後の血糖値およびHbA1cの変動

考察

酸素水(oxygenated water)の糖尿病に対する効果についてインドネシアの医学雑誌に報告があり 9) 糖尿病患者の食後血糖値が有意に減少したことから糖尿病に効果がみられたとされているが、実験に使用された酸素水に関する情報が少なく詳細は不明である。WOXは清涼飲料水製造法に基づいて2011年に開発、販売しているが、これまで有害事象の報告はなく 4) 、COPD、うつ病、糖尿病に有効であることを報告したが 5-7) 、今回糖尿病について例数を追加し、さらに検討した。

わが国での糖尿病の診断は血糖値で行われていたが、血糖値は食事や運動の影響を受けやすく、一時的な節制や過食でも簡単に数値が変わること、および合併症予測のため、上にも述べたようにHbA1cの測定が行われるようになった 8) 。HbA1cは過去2ヵ月の血中の糖分の動態をみるもので、食事などによる急激な変動はないとされていることから、日本糖尿病学会では「糖尿病合併症抑制のための推奨される治療目標」としてHbA1cを7.0%未満と定め、これを基準として6.0%未満を「血糖正常化を目指す目標」とし、さらに8.0%未満を「すべての患者が達成すべき治療目標」と設定している。一方、日本老年医学会合同委員会でも「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」として、合併症予防のためにはHbA1c6.5%未満としているが、7.0%を超えると網膜症や腎症の悪化率が急激に高くなるとしている 10) 。なおHbA1cのみの診断は不可とされているものの、血糖値とHbA1cが同一採血で糖尿病型を示すことが確認されれば1回の検査だけでもよいとされていることか 11) 、今回の飲用試験では同一血液材料で血糖値およびHbA1cを測定した。被験者24例のWOX飲用前の血糖値が基準値を超えた例は男性12例、女性4例、HbAlcで基準値を超えたのは男性10例、女性6例であった。また、両者とも基準値を超えたのは男性9例、女性4例であった。両者が基準値を超える例は合併症を起こすリスクが高いとされているが、男性では飲用後HbA1cは平均して0.6%の低下がみられ、4例は合併症予防のために推奨される6.9%未満まで低下していた。WOX飲用によりHbA1cが低下した理由として、血液への酸素補給により糖化型ヘモグロビン産生が抑制されたこと、糖化型へモグロビンを有する赤血球が寿命により減少したことによると思われる。一方、女性ではWOX飲用前後で差がみられなかった。その原因は明らかではないが、一般診療所での受診者が多いこと(8例中 6例)が影響しているかもしれない。また、貧血などにより高値になる場合やエリスロポエチン分泌機能の低下による赤血球の平均寿命の低下やアルコール多飲により一時的に上昇するといわれているが、今回の例では詳細は不明である。ちなみに男性例では16例中12例が総合病院もしくは大学病院での検査となっている。

今回の飲用試験では医療機関で発行された臨床試験結果に基づき効果をみたが、WOX飲用による糖尿病改善効果が期待されることから、今後、同一機関による臨床検査成績の比較、二重盲検法による検査、飲用期間の延長など、より客観的に効果について検討したい。

まとめ

WOX飲用による血糖値やHbA1cの低下傾向は男性でみられた。女性では例数が少なくさらに検討が必要であるが、飲用期間を延長することによる効果が期待される。

利益相反

本論文に記載されている企業からは、飲用試験に使用したWOXの提供以外に資金の提供は受けていない。

文献

1) 糖尿病ネットワーク:世界の糖尿病人口が4.2億人を超える世界保健機構(WHO)が対策を要請 2016. (http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/025325.php)

2) 糖尿病ネットワーク:日本の糖尿病有病率は1000万人超予備群は減少 国民健康・栄養調査 2017. (http://www.dm-net.co.jp/calendar/2017/027369.php)

3) 日経メディカル:血糖コントロール目標値を改訂、HbA1c値で6.0%, 7.0%, 8.0% の3段階に集約 2013. (http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jds2013/201305/530577.html)

4) 松本高明,大槻公一,谷口明ほか:高濃度溶存酸素液(WOX)飲用による動脈血酸飽和度(SpO2)への効果 Prog Med 2016:36:127-130

5) 萩原敏且,山崎勉,野口いづみほか:慢性閉塞性肺疾患(COPD)症状と高濃度酸素液(WOX)の飲用効果 Prog Med 2016:36:571-576

6) 萩原敏且,猪森茂雄,松本美弥子ほか:うつ、睡眠障害における高濃度酸素液(WOX)の効果 Prog Med 2016 36 973-976

7) 萩原敏且,松本美弥子,織田慶子ほか:糖尿病のHbA1cと高濃度酸素液(WOX)飲用 Prog Med 2016 36 1711-1713

8) 健康美容ニュースブログHAKUR、糖尿病:診断基準を見直しへヘモグロビンA1C(HbA1c)に(日本糖尿病学会) 2018年3月14日 (https://hakuraidou.com/blog/2783/)

9) Handajani YS, Tenggara R, Suyatna FD, et al:The effect of oxygenated water in diabetes mellitus. Med J Indones 2009:18:102-107

10) 日本老年合同委員会:高齢者糖尿病の血糖コントロー ル目標2016 2016年5月 (https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_01.html)

11) 日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診断ガイドライン、南江堂、東京 2013 p.372