人ウイルスに変化し続ける新型コロナウイルス

本研究会で、新型コロナウイルス感染病（COVID-19）は、動物由来の感染病で、病原体のコロナウイルスは、人から人へ感染を続けている間に、動物ウイルスから人ウイルスに変わる途上にあることを、私が過去に実施した鳥類のコロナウイルス感染病である鶏伝染性気管支炎（IB）研究成果を基に紹介してきました。

IBウイルスは、鶏に重篤な呼吸器症状、下痢、腎臓障害、産卵率の激減を引き起こす、インフルエンザウイルスのような呼吸器病ウイルスではありません。

私は、鳥類コロナウイルス感染病であるIBウイルスは、鶏に二度罹り、三度罹りすること、すなわち、免疫の成立している鶏にも感染することを、1972年春、鳥取県内複数の養鶏場で調査した結果突き止めました。その結果から、IB生ワクチンの予防効果に疑問を持ちました。

実際に、生ワクチン接種の予防効果は顕著ではなく、撲滅に至っていません。この現象は、全てのコロナウイルス感染病の宿命かもしれないと考えています。

ワクチン接種効果が明確に認められない原因として、単純に野外に分布するIBウイルスには多数の血清型が存在するためとされていました。

私は、IBウイルスには変異が頻繁に起きており、その変異が原因と予測しました。1970年代、コロナウイルスの変異は誰も証明していませんでした。

そこで、ほ乳類由来のBHK-21細胞でIBウイルスの試験管内で増殖を繰り返したところ、ウイルスの抗原が明らかに変異しました。世界で初めてのコロナウイルスの抗原変異を証明したのです。興味深いことに、変異ウイルスを鶏由来細胞で継代を進めたところ、抗原性が元に戻る傾向にありました。実験をさらに進め、鶏体内でもIBウイルスは、病型、臓器親和性に変異を起こす事を証明しました。